01磯焼けとは何か
「磯焼け」とは、岩礁域に茂っていたコンブやワカメ、ホンダワラといった海藻が減少・消失し、海底が岩だけの「海の砂漠」のような状態になってしまう現象です。海藻は小魚の隠れ家になったり、産卵場所になったりと、沿岸の生態系の土台を支えています。そのため磯焼けが進むと、根魚や小型のベイトフィッシュが減り、結果的に堤防や地磯の釣果にも影響が出てきます。
磯焼けの原因は地域によって異なりますが、大きく分けると「植食性の生き物による食害」「海水温の上昇」「栄養塩不足」という3つの要因が絡み合っていると考えられています。
02原因1:アイゴによる食害
アイゴは暖かい海を好む植食性の魚で、日本全国の沿岸に生息域を広げています。もともと冬になると水温の低下とともに食欲が落ち、海藻へのダメージは限定的でした。しかし温暖化にともなって冬場の海水温が下がりきらなくなったことで、アイゴが一年を通して活発に食べ続けるようになり、海藻が回復する前に食べ尽くされてしまうケースが増えています。
広島県の調査でも、アイゴの分布域拡大にともなって藻場への食害増加が懸念されると指摘されています。アイゴは棘に毒があり、独特の臭みから市場価値が低いことも、駆除が進みにくい一因になっています。
03原因2:海水温の上昇
海水温の上昇は、アイゴの食害を後押しするだけでなく、海藻そのものにもダメージを与えます。コンブやワカメなど冷たい海を好む海藻は、高水温が続くと枯れてしまいます。実際に枯死する水温に達する前でも、水温が上がることで植食性の生き物の活動が活発になり、先に食べ尽くされてしまう場合が多いことも分かってきています。
つまり海水温の上昇は「海藻そのものを弱らせる」と同時に「食べる側の生き物を元気にする」という、二重の形で磯焼けを進めてしまう厄介な要因なのです。
04原因3:瀬戸内海特有の栄養塩不足
瀬戸内海では、上流のダム建設や下水処理施設の整備が進んだ結果、海に流れ込む窒素やリンといった栄養塩類の量が減少し、これが磯焼けの主な原因のひとつになっていると指摘されています。栄養塩は海藻の生育にも欠かせない要素で、不足するとワカメやコンブが育ちにくくなります。
これは、以前このコラムで紹介した「広島県が下水処理をあえて弱めている」という話ともつながっています。栄養塩を増やす取り組みは、牡蠣だけでなく、海藻の生育や磯焼け対策という観点からも注目されているテーマです。
- アイゴなどの植食性魚類による食害が、海水温上昇で通年化している
- 海水温の上昇そのものが、冷水性の海藻を弱らせている
- 瀬戸内海では、栄養塩不足という地域特有の要因も重なっている
05まとめ
磯焼けは一つの原因だけで説明できるものではなく、食害・水温・栄養塩という複数の要因が絡み合って進んでいます。堤防や地磯で「最近、藻が減った気がする」と感じたら、その背景にはこうした海全体の変化が関係しているかもしれません。栄養塩管理の取り組みなど、対策の動きが見えてきたら、あらためてこのコラムで取り上げていきます。